森博嗣・Vシリーズ前半

黒猫の三角 (講談社文庫)

黒猫の三角

シリーズ初っ端から「これってありなんか?」というオチ。
しかし、「シリーズ最初だからこそ可能だった」という意見の人も結構居るようだ。
どっちかというとシリーズの途中に「最も古いエピソード」と注釈つけて入れた方が効果的だったと思うんだけどなぁ。

この作品を、特に保呂草視点に感情移入して読んだ(保呂草をお気に入りのキャラクターとして認識した)結果、次巻以降しばらくの間はどうしても保呂草が好きになれなかった、という点だけが、個人的にはちょっといただけなかったかもしれない。

トリック自体はいつもの森節(どうもこのシリーズは全編この調子のようだ)で、「考える」より「味わう」べき作品、といったところか。このシリーズに限らず、森作品ってのはミステリじゃないよなぁ……
まぁ、それでこそ「メフィスト賞的」なんだというのは間違いないだろうし、作品全体の雰囲気はかなり好みなので、読んでて非常に楽しくはあったんだけれども。

しかし、このキャラクターのネーミングはすごい。
紫子に紅子……


人形式モナリザ Shape of Things Human (講談社文庫)

人形式モナリザ

エピソードというか、テーマ自体は相変わらず森先生らしさたっぷり。一方で、ミステリとしてはもう完全に破綻というか、最初っから全くその気で作ってない感じがする。

この巻から、祖父江七夏がメインに登場。どうやらこのシリーズがこうした男女の心の機微を描く群像劇としての要素の方にむしろシフトしているらしいことが明らかになってきたように思う。70-80年代テイストな時代背景と相まって、若き日の森先生の創作活動を偲ばせる。
S&Mシリーズよりも、むしろ短編集の雰囲気に近いか。そっちの方も結構好きなので、このバランス配分はむしろS&Mシリーズよりも私の個人的な好みに合ってる気がした。

また、七夏とその娘の登場によって、「Vシリーズ最大のトリック」ともいうべき仕掛けが、なんとなく見えてきた。林警部のフルネームとか。他の刑事がフルネーム書いてもらえないのはそのせいかー、って。
まぁ、面白いと言えば面白いし、それで納得できた点も山ほどあるし、逆に「あれ?だとするとちょっとおかしくない?」って部分も結構いっぱい出てきた。後半戦でこの疑問点は解消されるのだろうか?

ちなみに、私はへっ君のお父さんみたいな人は個人的に死ぬほど嫌いです。

月は幽咽のデバイス (講談社文庫)

魔剣天翔

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