『疾走!千マイル急行(上)』小川一水

疾走!千マイル急行〈上〉 (ソノラマ文庫)

E中文庫その2。

しかし、相変わらずE中さんのチョイスはよくわからない。
基本的に超がつくほどの乱読の人なので、これも特に選んだ理由はないんだろうけど…とりあえず、どうせなら下巻が出た後で頂戴したかった(笑)寸止めはせつない。
まぁ、こんなことでも無かったら絶対に読まなかったであろう本なので、そういう意味ではこれも一期一会と言えなくはない。と、適当に自分を納得させてみる。

内容は「銀河鉄道999」と「宇宙戦艦ヤマト」を足して2で割った後現代風の味付けを化学調味料でパッパッとつけたような感じ。
それ以上でもそれ以下でもない。

非常にテンポ良く話が進むのでストレスが溜まらないのは良い点なのだが、如何せんその煽りをうけて主役格の少年少女達始め、主要キャラのほとんどが何もしない・できないという状態に陥っていて、ドラマ性に欠けること著しい。

また、せっかく試みた今風の味付けも、物語を高圧縮するために作られたアーティファクト臭がプンプンするリアリティのない背景設定によって、今ひとつ活きてる感じがない。
ガミラス帝国に不意打ちされたわけじゃないんだから、滅亡した地球に全く感情移入できないし、「嫌われ者の地球人」という設定も上手く活かすインパクトのあるイベントに乏しく、今ひとつピンとこない。
その結果、そうした背景に翻弄されて「揺れ動く少年少女の心」の描写も上手くできてるとは言いがたい。

しかしまぁ、通俗娯楽小説なのだから、その辺深く追求するのは野暮というもの。
この本の美点は、なんといってもストレスなくさくさく読み進んで時間を潰せ、後に何一つとし残らないさっぱりした後味に仕上がっているところなのだから。

いずれ下巻が出たらE中さんに教えてもらおうと思う。