TVアニメ『ブラック・ジャック』

私がブラック・ジャックの中でも特に好きなエピソードの一つに「土砂降り」というタイトルの話がある。(オリジナルは「メス」「土砂降り」)

離島医療、地方における公共事業の癒着体質などの社会問題を縦糸に、BJと若き女医・清水との恋愛模様を横糸に織り成されたこの話は、短いながら濃密な内容で、「ブラック・ジャック」という物語における様々な要素をあまさず内包した、代表的な作品の一つである(と、私は思っている)。

で、ファンからブーイングの嵐を浴びせられながらもなんとなく続行し続けている現行TVシリーズに、この話が収録されていたのを先日偶然目にした。
「やめておいた方がいい」と脳内に警鐘が鳴り響きはしたものの、どうしても好奇心から目を逸らすことができず、途中からではあるが最後まで見てみることに。

当然、後悔することになった。
…ヒドい。あまりにヒドすぎる。

「悲劇」としての結末を否定するのは、医療という現場において技術の限界と戦い続ける医師達の苦悩から目を逸らすことであり、すなわち、「間黒男」という一人の人間の否定に他ならないのではないのか。
「死人でもよみがえらせてみせますよ」的なスーパードクターを見せたいのであれば、魔界医師メフィストでもアニメ化してやればいいではないか。
何故、ブラック・ジャックでそれをやるのだ…

自分の持てる限りの力を尽くし、それでも患者を救えなかったBJが、一人ヤケ酒を呷って悔し涙を流す様や、それをそっとドアの向こうから見守るピノコの姿を見せないで、一体子供達に何を見せようというのか。

こんな風にオリジナルに泥を塗り続けるくらいなら、最初からやらないでいて欲しかった…