『眼球綺譚』

眼球綺譚 (集英社文庫)

ホラーはあまり好きではない。
特に理由は無いが、とにかくあまり「面白い」とは感じない。単に嗜好が重なってないんだろう。

ただ、ホラーには捻りの効いた構成に味のある短編が多いので、そういう作品は純粋に小説として面白いと思う。 この本だと、表題作の『眼球綺譚』あたりがそれに相当するだろうか。

『囁き』シリーズで長編ホラーも読んだわけだが、綾辻行人のホラー作家としての腕は高いレベルで凡庸とでも言ったところなのではないかと思う。品質が安定して高い分「安心して」読めてしまうのが、ホラーとしてよい事なのかどうか。
読んでいて退屈しないけど、読み終えたらそのまま内容を忘れてしまいそうな感じである。

そんな中で、面白さを感じたのは『眼球綺譚』『再生』のニ作品。逆に『特別料理』は一番怖かったけれど、ホラーとしてはどうかな、と思う。
割とロジカルなこれら三作品に対して、『呼子池の怪魚』『バースデープレゼント』『人形』の三作は作者にとっての新境地の開拓を予感させる雰囲気があるような気もするが、面白いのかどうか私にはちょっと判断しかねる部分があるので、評価は保留したい。『鉄橋』は普通に面白くなかった。

どうでもいいことだが、「ユイ」という女性に何を連想するかで、属する文化・世代が分かってしまいそうな気がするなぁ。