ハウルの動く城

エンドテロップが出た時点での心の中の第一声。
「あぁ、またやっちゃってるよ。この人」

全く興味がなかったので事前に情報収集してたわけじゃないけれど、ハウルの評判があまり芳しくない(話題にもなってない)のは知っていた。
仮にも御大・宮崎駿の作品なわけだし、「千と千尋の神隠し」(実はまだ見てない!)の大ヒットを考えれば、この世間の沈黙には少々不自然な感触を感じなずにはいられない。「…そんな風に考えていた時期が、俺にもありました。」

率直に言って、ハウルは完全に「失敗作」の部類に入ると思う。
多分、「もののけ姫」よりヒドイ。

決してつまらないわけではない。個人的には、二時間たっぷり楽しんで満足できたと思う。だが、それはあくまでもこちらの中に様々な経験があってこの作品を「受け入れる」下地ができていたからであり、世間一般的にそうしたモノを求めることは明らかに無理だ。
とにかく、物語が異常なまでに短くフラグメント化してる上、その配列がメチャメチャ。ぼんやり見ていては、さっぱりストーリーが理解できないまま、最後に「ハッピーエンドってわけ?」などというセリフを吐かれてブチ切れること間違いなし、である。
紅の豚」のように、「印象的なシーン」を数多く作り出し、繋ぎ合わせることで良質の作品を生み出して来た氏お得意の手法が、完全に裏目に出ている感じ、といったところだろうか。

そもそも、「ハウル」の物語は、「宮崎駿の三本柱(自然、王道、ヒロイン)」のうち最も一般受けが悪いであろう「ヒロイン」要素によって99%が占められている。にもかかわらず、作中のシーン配分は自然4:王道2:ヒロイン4程度の比率になっており、著しくイベント消化の効率が悪い。
かなりボリュームがある(それこそ、30分アニメにして1クール悠々もちそう)ソフト(ストーリー)を用意しておきながら、ハードの性能がこれでは散々な結果になるのは当然の帰結といっていいだろう。

個々のエピソードにしても、雰囲気重視なセリフ回しや演出のせいで、その場における登場人物の心情などを読み取るのに能動的な理解が必要となっており、「ミステリ読者(by舞城…って、直接は言ってないが)」「神人(by流水)」的気質を持って望まなければ重要なポイントをポロポロと取りこぼしてしまうことうけあい。
しかも、全部拾ってもパーツが足りないのだ!テーマを早い段階で読み取って行間を埋めていかないと、「何故こうなっているのか」とかが全く理解できない。(何故呪いが解けるのか、とかね)

まだ書きたいこともあるけど、とりあえず今日のところはこれくらいで。

また折を見て、各論にも踏み込んでみたいところ。
少なくとも、見ている間中とても気になった3点についてはどうにかしたい。

以下、3つのポイント

  • 自然の描写が今ひとつ
  • ヒロイン・ソフィーの仕草について
  • 物語に踏み込んでくる「戦争」の扱いについて