『覚醒者』友成純一

覚醒者 (光文社文庫)

E中さんから貰った本。
ちなみに、E中さんがくれると言う事とE中さんオススメであるということは必ずしもイコールではない。

エンタテイメント要素をすっぱりと切り落とし、ひたすらインドネシアの風俗紹介やアル中男の見る幻覚の中身などの記述に終始し、中盤以降ストーリーが破綻しはじめ、そのまま最後はしっかり破綻してみせるという、実に見事な小説。
クトゥルフ神話モノとしては古典的・王道的な作風を再現しているといっていいだろう。…一般的に褒め言葉になるのかどうかは知らんけど。

解説の永井豪は続編を期待してるみたいだが、多分この作品はこの破綻した結末で正しく終わっているんだと思う。この後を続けたって帝都物語にはなり得ないわけだし。

まぁ、2000年代の現代日本社会にクトゥルフ教団を持ってきたらどうなるのかという部分は結構良い着眼点だったのではないかと思う、と一応褒める部分も無理やり探してみた。
福岡を知らない私にはリアリティの程がいまいちピンとこないんだけれども。