『秘密屋文庫 知ってる怪』

秘密屋文庫 知ってる怪 (講談社文庫)

これだから清涼院流水はやめられない。

この作品、いつもながらのダメダメな文章(日刊連載的にセクション毎に気分を改めて書いてるのか、とにかく同じ事を繰り返し何度も言う『カーニバル』以降顕在化してきた癖が増々酷くなってきてる)に始まり、本で読んだ生半可な知識の丸投げ、一般人のセンスでは理解できないダジャレの連打、荒唐無稽な現実とのリンクと続いた挙句、最後は読者置いてきぼりで唐突にメタ世界に突入という、あまりといえばあまりな「いつもの」流水大説である。

だが、それがいい

他人に理解してもらうのは難しいのだが、とにかくその馬鹿馬鹿しさまで含めて、何故かこの人の作品は私の様々な「ウケ」のツボにピッタリはまる感じがする。
年齢こそ3歳違うが、同じ街で生まれ、同じような学歴を辿って、同じような趣味を持って育った、という文化背景の共有というのが一つにはあるのかもしれない。
それでいて、僅かに(或いは大いに)異なったいくつかの点が、これまたちょうど作者と読者としての立場の差を形成するのに相応しいモノであることも少なからず影響があるのだろう。
しかしまぁ、そうした理屈を抜きにして、とにかく私は「御大(by西尾維新)」としての清涼院流水の作品が大好きなのだ。
(「御大」じゃない数多くの流水作品は見るのも嫌だが(笑))

まるで大塚英志センセイの影響を受けたかのような(笑)『赤』のテーマ設定。
かつて友人だったこともあった満腹亭君の作るシナリオでもここまでは有り得ないだろうというような「N中先生大暴れ」な『白』の破天荒さ。
そして、突然思い出したかのよう二「御大」ワールドへと捻りつなげた『黒』の強引さ。 その全てが、いとわしい、ではなくいとおしい。

でもまぁ、アホ小説であることを認めるには吝かではないのだけれども。

ところで、『赤』に出てくる「500円ババァ」と思われる人に学生時代実際に会ったことがあるのは私だけでしょうか。