先日京都にいったときのお話。

予定通りコンパに出席して、けーた君やK林君やD君やTちゃんなど懐かしい顔を見てご満悦で過ごしていた深夜0時頃。隣に居たE中さんの携帯が突然鳴った。
顔を見合わせるE中さんと私。電話の主が何となく思い浮かんだ、というより、ほとんど確信に近い形で直感できてしまった。

予想通り、電話の主は亀のおじさんだった。
「今から合流するから」って、神出鬼没にも程がありますぜ。

待つ事一時間。終電に乗って合流してきたおじさん。
開口一番「腹減ったから飯いこか」
…我々、さっきまで散々飲み食いしてたんですが…

そんな話におじさんが耳を傾けるはずもなく。
既に半ばマグロと化していた西山さんやたまたま居合わせてしまった木南さんまで巻き込んで、近くの居酒屋にの飲みに行く事になった。

正直、そんな遅い時間に開いてる店が近くにあるとは思えなかったのだが、幸か不幸か大通りに出たところでいきなり良さげな店を発見してしまう。しかも、営業時間はAM5:00まで。亀のおじさんの顔が嬉しそうになるのをみてE中さんと二人で嫌な予感を抱え込む。

まぁ、それでもいざ飲み始めてしまえば楽しむしかないわけで。
幸いにして店はかなりいい感じだったので、仕事疲れで完全にお休みモードの西山さんはともかく、E中さんと私と木南さんは(当然亀のおじさんも)中々楽しい時間を過ごす事が出来ていたと思う。

…そう、その瞬間までは。

ここで、座席の配置を語っておこう。
店内はかなり手狭で、L字型のカウンター席が10ほどと、4人掛けテーブルが1つに、二人掛けテーブルが一つというシンプルな構造。
我々はテーブル席に別のイスを持ってきて5人で座っていた。カウンター席に背を向ける形のいわゆる「お誕生日席」は一番の不便な席ということで、最年少の私が座っていた。

異変に気づいたのは、E中さんと私、ほぼ同時だったのではないかと思う。
つい先ほどまで調子良く飲んで語っていた亀のおじさんの挙動が、急に不振なものとなったのだ。 (E中さんはこの段階で既に事態の全貌を掴めていたためか、変な顔をしていた)

私がせっかくおじさんの振った話を受けて語っているというのに、それを全く聞いていない、というか視線が私を通り越してどこかあらぬ方を見ているのだ。時折うなずいたりしている様子から、誰かとアイコンタクトを取っているような感じである。
だが、私の後ろにあるのはカウンター席。店内に知り合いが居ない事は最初に確認済み。おじさんの知り合いで私が知らない人というのはほとんど0に近い(もしくはおじさんも回避したい類の知り合いしかいない)はずなので、そういった可能性はありえない。
では、この意味ありげな視線は何だというのだ?

その段階で後ろを振り向く事がためらわれた私がとりあえず出した結論は、先ほど店内の喧騒に消されてしまった追加オーダーのタイミングを計ってくれているのではないか、というものだった。
一瞬、ほんの一瞬だが、感謝の念を持ってしまう私。…決してこれは私の愚鈍さをあらわすものではない、と今でも信じているが。

(つづく)